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劣等感

「あっ,これね,知っとるよ」
私は20歳くらいまで知ったかぶりな奴でした.こんな私を心の底から好いてくれる人はあまりいなかったでしょう.

 その時,私は劣等感の固まりだったのです.だから,人から「小石,凄いやん!」と思われたい一心で振る舞っていました.

 相手が私のことを認めてくれないと不愉快でたまりませんでした.しかし,いま考えると相手が私のことをまったく認めていないのではなく,ただ私の認めてもらいたい部分を認めてくれていなかっただけなのだとわかりました.

 それで,「もっとオレのことを認めてくれ!」といえないものですから,どんどんその不愉快な気持ちが膨らんでいったということです.

 私にとってその認めてもらいたい部分を他人に認められて初めて劣等感から逃れられたのです.他の部分を認めてもらっても一向に嬉しくありませんでした.

 自分の能力のなさを素直に受け入れられなかったのです.それが劣等感を持つ人の悪いところです.自分にもっと能力がないと納得がいかないのです.

 例えば,異性にモテたいがために自分がいかに男性として,女性として能力があるか,ということを誇示しようとする行動に出ます.それが私の場合は知,知ったかぶりという行動でした.

 またある人は,いい車乗って,高い服を身にまとう行動にでます.見栄っ張りもその人の持つ劣等感の表れの1つです.背伸びをしている自分に心を開いてくれる人は少ないのです.そんな人は心の底から人を愛したことがなく,また人から愛されたことがないのでしょう.

 自分が人よりも劣っていても,自分に存在価値があることさえも気が付かないのです.この劣等感は他人と比較されて育った人に多いのです.「なぜ,あなたはお兄ちゃんのように成績がよくないの!」と親から叱られたことのある人は要注意です.
「あなたはあなたなんだからマイペースでやろうよ」というようにあなたの存在価値を親が愛を持って示してくれていれば,劣等感は生まれてこないんじゃないかと思います.

 いざ,彼女・彼氏ができても,相手の近くに自分よりも能力のある人がいると嫉妬するのです.相手はあなたの持つ「あなたらしさ」が好きなのですが,それをあなたは理解できていないのです.そのような状態ではケンカばかりになってしまいます.

 劣等感の強い人は他人よりも優れた能力がないとつまらない人間だと思うのです.しかし,その優れた能力だけが人の魅力ではないのです.弱い人なら,その弱い部分を愛してくれる人がいます.また傷ついている人も「オレ・私がいてあげないと」と愛してくれるのです.

 私の知人に会社役員をやってて一戸建ての家に住み,奥さんと子どものいる家庭を持っていた人がいます.
 奥さんの他に女性がいたのがバレて,奥さんから離婚届けを突きつけられ,財産を全て持って行かれました.挙げ句の果てに,会社も倒産してしまいました.無一文になったのです.

 今はその時に付き合っていた女性の所にお世話になっています.そうなってもその女性から愛されています.私はこの男性のことを肯定はしませんが,もし,その男性が自分にお金がないとダメな人間なんだ,と思う人であればうまくいかなかったと思います.

どうしょうもない奴がモテる,という現象もこれに関係があります.弱いから,傷ついているから必要としてくれることもあるのです.

 自分の弱いところを隠す人と克服しようとする人では,大きな差があります.隠そうとしても,他人から見ればバレバレなんです.むしろ,自分の弱いところを素直に認めて改善しようと努力することによって,新たな魅力が作られるのではないかと思います.

 自分の弱いところを隠さず見せてくれる人は,まわりから親しみを持ってもらえると思います.変なプライドを持つ人は自分の弱いところを隠そうとしているのです.

 要は,ありのあままのあなたで振る舞えばよいということになりますね.


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